窓を開けると、春の匂いとともにそよ風が部屋に入ってきた。
軽やかに揺れるカーテンを見ながら、私は今日の服を選ぶ。
この午後は、何も特別な予定はない。
けれど、ただ外の空気と一緒に歩きたい気分がある。
ふわりと風をまとえるワンピースを手に取る。
布が体を撫でる感触に、思わず深呼吸する。
駅までの道、木々の間を抜ける風。
歩くたびに裾が揺れて、少しだけ心まで軽くなる。
風といっしょに、今日の午後が私を運んでくれるようだ。
バッグに手をかけると、柔らかい日差しが肩に落ちる。
太陽も風も、服を通して体に触れるたび、
小さな幸せがじんわりと広がる。
特別な何かを求めていない午後だからこそ、
風に揺れる布の感触や、光の角度、道端の花の色が贅沢に感じられる。
日常の静かな喜びを、服と風がそっと教えてくれるのだ。
帰り道、少し冷たい風が顔を撫でる。
でも、私のワンピースはまだ軽やかに揺れている。
風をまとう午後は、ただ歩くだけで、心まで柔らかくなる。
服はただの布じゃない。
気分を映し、日常を包み込む、見えない魔法のような存在だ。
そして今日の私は、この午後を、風とともに生きている。
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