2026年3月2日月曜日

試着室で現実を見る午後

お店の中では、なぜか自分が少し素敵に見える。
照明がやさしい。
マネキンも完璧。
「いけるかもしれない」と思ってしまう。

手に取ったのは、今年らしい一枚。
店員さんもにこやかに言う。
「お似合いになると思いますよ。」
その一言で、心はもう半分レジに向かっている。

そして、試着室へ。
カーテンを閉めた瞬間、世界は静かになる。
ここは戦場だ。

着てみる。
鏡を見る。
……あれ?
さっきの“いけるかもしれない”はどこへ?

角度を変える。
少し姿勢を正す。
お腹を引っ込める。
「うん、これは自然な立ち姿です」と自分に言い聞かせる。

思っていたシルエットと、現実のシルエット。
理想と今の私が、鏡の中で軽く会議を始める。
議題はひとつ。
「本当に似合っているのか?」

でも不思議なことに、
全部がダメなわけじゃない。
「あ、意外とこの色はいいかも。」
そんな発見もある。

試着室は残酷だけど、正直だ。
そして少しだけ、やさしい。
今の自分をちゃんと教えてくれる。

結局、その服はハンガーに戻した。
でも代わりに、もっとしっくりくる一枚を見つけた。

試着室で見るのは、現実だけじゃない。
今の自分と、これからの自分。

カーテンを開けるとき、
少しだけ大人になった気がする。
そして心の中でつぶやく。
「今日もいい勉強でした。」

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